ラグビー日本代表から学べる事 - 医療法人社団 いずみ会 メディカルはば伊豆高原
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ラグビー日本代表から学べる事

2026.01.09

ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本代表のスローガン「ONE TEAM(ワンチーム)」が、「現代用語の基礎知識選 2019 ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれたことがあった。

2019年に開催されたラグビー・ワールドカップ(W杯)日本代表はメンバー31人中15人が海外出身者でスタッフもヘッドコーチをはじめ、多くの外国人がいた。このような多様性をもった日本代表は、「ONE TEAM(ワン・チーム)」を合言葉に結束力を高め、史上初のベスト8進出という快挙を成し遂げた。

この年のラグビー日本代表の姿は、日本経済の将来の一つの方向を示すとも言われている。現在、深刻な労働力不足に悩まされる我が国は、如何にして、それを補うかが喫緊の課題である。人口の減少は、2050年までに現在の人口から20%減少し、1億人程度になると言われており、合わせて労働供給の減少も大きく、人手不足が深刻になる。具体的には性別、年齢別の労働力参加率が現在のままだと約25%減少するといわれる。日本政府は2018年12月に、労働力不足に直面する分野に専門性を持つ即戦力の外国人のための新たな在留資格を設けた。外国人労働者が増えることで、日本経済に与える影響を考える際、互いの労働力が代替的なのか、それとも補完的なのかが重要となる。

2019年のラグビー日本代表に外国人選手が約50%参加したことで、ワールドカップで結果を残し、国内の新たなファン層を獲得し、スポンサー企業や関連産業の利潤も増加したといわれる。しかし、そこで考えたいのが、日本人代表選手の中には得をした人達と損をした人達が居るということ。海外出身者の比率はポジションによって異なり、フォワードでは代表選手18人中11人が海外出身であり約61%を占める、一方、バックスでは13人中4人で約30%しかいない。つまり、フォワードでは外国人選手との代替性がつよいが、バックスでは代替性が低いということになる。海外出身選手が日本代表に選ばれることで、大きな損失を被ったのは日本代表に選ばれなかったフォワードの日本人選手であり、一方、大きなメリットを受けたのは優秀な日本人のバックス選手だろう。フォワードとバックスは補完的なため、大会では外国人相手に体格で見劣りせず、能力の高い海外出身選手がフォワードに加入したことで、バックスの日本人選手はワールドカップでトライをあげる等の大活躍が出来たと言っても過言ではない。つまり、海外出身選手と代替的な技能を持っていた日本人のフォワード選手にとっては、代表入りのチャンスが少なくなるという損失をもたらした一方で、彼らと補完的な技能を持っていた日本人のバックス選手にとっては活躍の場を大きくするというメリットをもたらしたと言える。

外国人労働を増やす際に、日本人の多くがその恩恵を被るためには、日本人が外国人労働者とは補完的な技能を身につけることが必要である。ラグビー選手で考えてみると、日本人選手の育成段階で、フォワードの選手は海外出身選手と同等以上の活躍が出来る選手でない限りは、フォワードの選手として育成せず、できるだけ海外出身選手と補完的なバックスの選手の育成に集中すべきということになる。スポーツに限らず教育訓練にしても、外国人労働者と補完的な仕事につけるような能力の育成が重要だろう。日本人とのコミュニケーションが重要な仕事であれば、日本人労働者が比較優位を持っている。

外国人労働者と補完的な能力を身につけるという考え方は、技術革新への対応でも同じである。人工知能やITという技術革新は、定型的な仕事や予測を必要とする仕事を大幅に人間から機械に置き換えていく。つまり、それらの仕事は、人工知能やITの得意な仕事と代替的なのだ。人工知能と補完的な仕事は人工知能が苦手な仕事だ。豊富なデータをもとに予測するのは人工知能が得意とする分野だが、限られた情報しかない場合に、適切な予測をする能力や人工知能が出してきたデータをもとに意思決定をする能力は、人間の方が優れている場合が多い。つまり、ビジネスでの意思決定の多くは、人工知能とは補完的な能力が求められるのである。といっても、技術革新のスピードは速く、少し前までなら機械では不可能だった仕事も、どんどん機械で出来るようになっていく。それでも、人間にしかできない仕事も生み出され続けていく。私たちは常に他人や機械に代替されないような技能を身につけるために、学び続ける必要があるのだ。そのことをラグビー日本代表の選手達が教えてくれている。

引用文献:「スポーツ分野と経済学」日本経済新聞社所収(2019)、「ラグビー・ワールドカップ(2019)特集」Sports Graphic Number ㈱文藝春秋

令和8年1月9日 リハビリテーション科 吉和田 裕資